焚き火・ストーブ4.0

ピコグリル398 レビュー:365gの焚き火台はソロキャンプの「最適解」か

公開日: 更新: 2026-02-28 00:39:42著者: 前田 ひなた
ピコグリル398 レビュー:365gの焚き火台はソロキャンプの「最適解」か
4.0/ 5.0

総合スコア

高評価。購入の価値あり

+良い点

  • 本体365gの圧倒的軽量性。バックパックに入れても負担にならない
  • A4サイズ・厚さ1cmに折りたためるフラット収納
  • 火床が横に広く、キャンプ場の薪がそのまま乗る燃焼効率の高さ
  • 組み立て30秒。パーツ3点のシンプル構造

-気になる点

  • 0.2mm厚ステンレスの火床は使い込むと変形する
  • 中央のスリットから灰が落ちるため焚き火シートが必須
  • 付属スピットの安定性が低く、重いクッカーを載せるとヒヤッとする

スペック

重量約365g(本体・公称値)/ 約448g(スピット2本・収納ケース込み)
素材ステンレス(板厚0.2mm)
組立サイズ約38×25×24.5cm(公称値)
収納サイズ約33.5×23.5×1cm(公称値)
原産国スイス製
付属品スピット2本(310mm)、収納ケース
参考価格15,300円(税込)
メーカーSTC社(スイス)

ソロキャンプ用の焚き火台を探すと、必ず候補に挙がるのがピコグリル(Picogrill)398です。スイスのSTC社が手がけたこの焚き火台は、本体わずか365g(公称値)という軽さとA4サイズのフラット収納で、バックパックキャンプの定番として支持を集めています。正規品の価格は15,300円(税込・WANDERLUST EQUIPMENT販売価格、2026年2月時点)と焚き火台としてはかなり強気の設定。この記事では、3シーズン・累計25泊以上のフィールド使用を経た筆者が、調理性能と携行性を軸に本音で評価します。結論から言えば、ソロキャンプで「軽さと焚き火調理の両立」を求めるキャンパーにとって、今なお有力な選択肢です。ただし、知っておくべき弱点もあります。

365gの軽さがキャンプスタイルを変える

ピコグリル398の最大の魅力は、やはり本体365gという圧倒的な軽さです。

ソロキャンプの焚き火台というと、1kg前後のモデルが一般的。スノーピーク(Snow Peak)の焚火台Sでさえ1.8kgあります。ピコグリル398は、そのおよそ5分の1。スピット2本と収納ケースを含めても約448gで、500mlペットボトル1本より軽い計算になります。

収納時のサイズは約33.5×23.5×1cm。A4ノートとほぼ同じ大きさで、厚さはわずか1cmです。バックパックのハイドレーションスリーブにすっと差し込めるこの薄さは、徒歩キャンプやツーリングキャンプでは決定的なアドバンテージになります。

筆者がこの焚き火台を手に取って最初に驚いたのは、持った瞬間の「これだけ?」という軽さでした。パッキング時に焚き火台の重さを気にしなくていいというのは、食材や調理器具を多めに持ちたい料理好きキャンパーにとって、正直ありがたい。焚き火台を軽量化した分だけ、スキレットやスパイスボックスに重量を割けるわけです。

スペックと基本情報

項目ピコグリル398
メーカーSTC社(スイス)
素材ステンレス(板厚0.2mm)
本体重量約365g
総重量(スピット・ケース込み)約448g
組立サイズ約38×25×24.5cm
収納サイズ約33.5×23.5×1cm
付属品スピット2本(310mm)、収納ケース
価格(税込)15,300円(※販売価格は変動する場合があります)

※スペックはメーカー公称値。重量・サイズは個体差により若干異なる場合があります。

火床の構造がこの焚き火台の設計上のポイントです。2枚のステンレスプレートを「V字」に組み合わせる構造で、薪の下に空気の通り道が生まれます。この構造のおかげで、下から自然に空気が流入し、薪が効率よく燃焼します。

組み立ては3パーツ(フレーム×1、シェル(火床)×2)をはめ込むだけ。パーツ点数が少ないぶん紛失リスクも低く、暗い中でもストレスなく設営できます。

フィールドでの使用感——設営から焚き火調理まで

設営:慣れれば30秒

初回の組み立ては少し戸惑いました。フレームの脚を広げ、2枚のシェルをフレームのスリットに差し込む——文字にすると簡単ですが、シェルの向きとはめ込む角度にコツがあります。3回目くらいから身体が覚え、今では30秒もかからず完了します。

撤収も同様にシンプルで、灰を落としてシェルを外し、フレームを畳むだけ。ただし使用直後は金属が熱いので、10〜15分ほど冷ましてから触れる必要があります。ここは急いでいるときにもどかしいポイントです。

焚き火の燃焼効率:火床の広さが効く

火床の横幅は約38cm。キャンプ場やホームセンターで売られている一般的な薪(長さ30〜40cm)をそのまま載せられるのは大きなメリットです。薪を割る手間が省けるだけでなく、太めの薪を2〜3本並べて豪快に燃やせます。

V字形状のおかげで薪の下に空間ができ、着火もスムーズ。着火剤と細い枯れ枝を底に置き、その上に薪を渡せば、風が弱い日なら5分もかからず安定した焚き火になります。

調理性能:料理好きには「あと一歩」

筆者が最も重視していた調理性能について正直に書きます。

付属のスピット2本をフレームに渡し、その上にクッカーを載せるのが基本の調理スタイルです。メスティンでご飯を炊いたり、シェラカップでスープを温めたりする程度なら問題なく使えます。

ただし、このスピットは**フレームの上に「載せているだけ」**の構造です。薪を動かしたとき、クッカーごとスピットがずれることがあります。16cmスキレットで肉を焼いていたとき、薪を足そうとしてスピットに手が当たり、ヒヤッとした経験が何度かあります。

火力の調整は薪の量でコントロールするしかなく、これはこの手の焚き火台全般に言えることですが、繊細な火加減が必要な調理には向きません。強火でざっと炒める・煮込む・湯を沸かすといった調理がこの焚き火台と相性がいいジャンルです。

一方で、火床が広い分、片側で焚き火を楽しみながらもう片側で調理するという使い方ができるのは楽しい。焚き火のそばでじわじわとスキレット料理を仕上げる時間は、キャンプの幸福度を確実に上げてくれます。

悪条件での使用:風と雨の日に見えた弱点

ピコグリル398の弱点が露骨に出るのが風の強い日です。火床が浅いぶん、風をまともに受けると炎が横に流れ、スピット上のクッカーへの熱が安定しません。風速3〜4m/sを超えると調理はかなり厳しくなります。ウインドスクリーンを併用するか、風を背にできるサイト選びが重要です。

雨天の撤収も一手間かかります。ステンレスは錆びにくい素材ですが、0.2mm厚の火床に水分が残ったまま収納すると変色の原因になります。雨撤収の際はタオルで水気を拭き取ってからケースにしまうようにしています。

季節別の使い分け——春秋がベストシーズン

春(3〜5月)

ピコグリル398が最も活きる季節です。朝晩の冷え込みに焚き火の暖かさがちょうどよく、日中は調理を楽しむのに快適な気温。4月中旬、静岡県のキャンプ場(標高約300m、気温12〜18℃)で使用した際は、夕方からの焚き火調理が最高でした。

夏(6〜8月)

暑い時期は調理台としての出番がメイン。焚き火で暖を取る必要がないため、短時間の調理に使ってすぐ撤収するスタイルになります。標高1,000m以上のキャンプ場なら夜間に焚き火を楽しめます。虫が火に寄ってくるのが気になる季節でもあります。

秋(9〜11月)

春と並ぶベストシーズン。焚き火の暖かさと調理の両方を存分に楽しめます。10月下旬、山梨県の林間キャンプ場(標高約800m、最低気温5℃)で使用した際は、薪をたっぷり燃やして暖を取りながらの鍋料理が至福の時間でした。

冬(12〜2月)

暖房目的には力不足というのが率直な感想です。火床が浅く輻射熱(ふくしゃねつ:炎から直接放射される熱エネルギー)が小さいため、寒い夜に身体を温めるには心もとない。冬キャンプで暖を取りたいなら、反射板付きの深型焚き火台か薪ストーブを検討すべきです。調理目的に限定すれば冬でも使えますが、手がかじかんだ状態での組み立てはスピットの取り扱いも含めてストレスが増します。

なお、ピコグリル398はテント内・タープ下での使用は厳禁です。閉鎖空間での焚き火は一酸化炭素中毒や火災のリスクがあり、命に関わります。冬場でも必ず屋外の通気が確保された場所で使用してください。

気になったポイント——知っておくべき5つの弱点

1. 火床が変形する

最大の弱点です。0.2mmという極薄のステンレスは、繰り返しの加熱と薪の重さで徐々にV字が浅くなっていきます。月2〜3回ペースで使用した場合、1年ほどで火床のたわみが目立ち始めます。致命的に使えなくなるわけではありませんが、フレームとのかみ合わせが甘くなり、安定性が低下します。正規販売店で交換用シェルが購入できるので、消耗品と割り切るのが現実的です。

2. 灰が下に落ちる

V字に組み合わせたシェルの中央にスリットがあるため、燃焼中に灰が地面に落ちます。焚き火シートは必須です。直火禁止のキャンプ場はもちろん、芝生サイトでは焚き火シートなしだと地面を傷めてしまいます。焚き火シートの選び方については焚き火・ストーブカテゴリの記事もあわせてご覧ください。

3. スピットの安定性

先述のとおり、スピットはフレームに「載せるだけ」です。ロック機構がないため、不意に触れるとずれます。重さのあるダッチオーブンやフライパンは載せないほうが安全です。別売りの社外品グリルプレートを使う手もありますが、追加コストがかかります。

4. 地面との距離が近い

火床から地面までの高さは約12cm。薪が大きく燃え上がると輻射熱が地面に届きやすく、焚き火シートを敷いていても地面へのダメージが心配です。石やレンガで嵩上げするか、厚手の焚き火シートを使うといった対策をおすすめします。

5. 偽物・類似品が多い

ピコグリル398は人気製品ゆえにコピー品が市場に出回っています。正規品は火床に「Picogrill」の刻印があり、正規代理店(WANDERLUST EQUIPMENT等)から購入すれば確実です。フリマアプリや海外通販の極端に安い出品(7,000円以下)は要注意です。

競合ギアとのスペック比較

ソロキャンプ向け焚き火台の主要モデルと比較してみます。

項目ピコグリル398TokyoCamp 焚き火台ベルモント TABI(BM-246)スノーピーク 焚火台S
重量約365g約985g約423g約1.8kg
収納サイズ33.5×23.5×1cm32×22×2.5cm17.8×36×1.5cm35×41×2.5cm
素材ステンレス(0.2mm)ステンレスチタンステンレス(1.5mm)
組立サイズ38×25×24.5cm40×22×26cm23.7×36×17cm28.5×26.5×20.5cm
価格(税込)15,300円4,980円前後12,100円11,880円
耐久性
調理のしやすさ
携行性×

※価格は2026年2月時点の参考価格。販売店・時期により変動します。

TokyoCamp焚き火台は、ピコグリル398の約3分の1の価格で手に入る人気モデルです。ステンレス製で耐久性に優れ、火床の形状も似ています。ただし重量は約985gとピコグリルの2.7倍あり、収納時の厚さも2.5倍。車移動がメインなら価格差ほどの不満は感じないでしょうが、バックパックキャンパーにとって620gの差は無視できません。調理性能はスピットの安定感でTokyoCampがやや有利。コスパ重視で車移動メインならTokyoCampを推します。

**ベルモント(Belmont)TABI(BM-246)**は、チタン素材で約423gとピコグリルに迫る軽さを実現しています。価格は12,100円(税込)とピコグリルより手頃で、チタンならではの耐久性はステンレスを凌ぎ、火床の変形リスクも小さい。ただし火床面積はピコグリルより狭く、40cmの薪は収まりません。調理スペースの広さではピコグリル398に軍配が上がります。耐久性を重視するUL志向のキャンパーにはTABIが合うでしょう。

スノーピーク焚火台Sは真逆のアプローチ。1.5mm厚のステンレスは頑強そのもので、一生モノの耐久性を誇ります。ただし1.8kgの重量と収納サイズはバックパックキャンプには不向き。車でキャンプ場に乗り付けるスタイルなら、安定感と耐久性で焚火台Sが圧倒的に安心です。

価格と購入判断——15,300円は高いのか

ピコグリル398の正規品価格は15,300円(税込・WANDERLUST EQUIPMENT販売価格)。Amazon等の通販では並行輸入品が12,000〜14,000円程度で販売されていることもありますが、正規品の保証を考えると正規代理店からの購入が安心です。

率直に言うと、「0.2mm厚のステンレス板の焚き火台に15,000円超」は躊躇する価格です。TokyoCamp焚き火台が5,000円以下、ベルモントTABIがチタン製で12,100円で買えることを考えると、なおさらでしょう。

しかし、365gという軽さと1cm厚のフラット収納、そして火床の広さを兼ね備えた製品は、現時点でもこの価格帯で代替が見つかりにくい。TABIはより安価で耐久性も上ですが、火床の広さではピコグリルが勝ります。

「バックパックキャンプで焚き火調理がしたい」という明確な用途があるなら、15,300円の投資は許容範囲だと筆者は考えます。一方、車移動がメインならTokyoCampで十分です。使い方が定まっていない段階でいきなり買うのは、あまりおすすめしません。

まとめ——ピコグリル398はこんなキャンパーにおすすめ

ピコグリル398は、365gの軽さと調理もできる火床の広さを両立した、ソロキャンプ焚き火台の定番モデルです。ただし耐久性に課題があり、万能ではありません。

おすすめのキャンパー:

  • バックパックキャンプやツーリングキャンプで携行性が最優先の方
  • 焚き火を眺めながら簡単な料理を楽しみたいソロキャンパー
  • UL(ウルトラライト)志向で装備の総重量を削りたい

こんな方には合わないかもしれません:

  • 冬キャンプで暖房代わりに焚き火を使いたい方 → 深型焚き火台や薪ストーブを検討
  • 重いダッチオーブンで本格的なキャンプ飯を作りたい方 → 耐荷重の高い焚き火台が安心
  • 車移動がメインで軽さにこだわらない方 → TokyoCamp焚き火台やスノーピーク焚火台のほうが耐久性・コスパで優位

軽さという一点においてピコグリル398は今なお揺るがないポジションにいます。その365gがあなたのキャンプスタイルに合うかどうか——それが購入判断の分かれ目です。

焚き火台と一緒に揃えたいクッカー・調理器具や、ソロキャンプの装備全般については今後も記事を追加していく予定です。

前田 ひなた

キャンプ料理研究家・フードコーディネーター。飲食業界10年の経験を活かし、焚き火調理やクッカーの使い勝手を「美味しさ」と「手軽さ」の視点でレビューします。